情報セキュリティ対策において、バックアップは欠かすことのできない重要な要素です。
データやシステムの保護、災害や事故、サイバー攻撃からの復旧に不可欠な手段となります。
この記事では、バックアップの重要性と、具体的な実施方法について解説します。
データの損失は情報システムにおいて大きなリスクであり、その影響は甚大となります。
バックアップは、このリスクに対する最も効果的な対策の一つといえるでしょう。
ここでは、データ保護と事業継続性の観点から、バックアップの重要性を詳しく見ていきます。
バックアップは、以下の理由からデータ保護に重要な役割を果たします。
①情報資産の喪失や破損を防ぐ
:重要なデータが失われたり、破損したりした場合に、バックアップから復元することができます。
たとえば、時間をかけて作成した財務データや長期に渡って収集した顧客情報が消失した場合、バックアップがなければ再作成・再収集に膨大な時間とコストがかかります。
②ランサムウェアなどのマルウェア対策
:ランサムウェアに感染し暗号化されたり、マルウェアによってデータを破壊されたりした場合でも、バックアップからデータを復元することで、業務を継続できます。最新のバックアップがあれば、感染前の状態に素早く戻すことができ、被害を最小限に抑えられます。
③人為的ミスやハードウェア障害への備え
:誤ってデータを削除してしまった場合や、ハードディスクが故障した場合でも、バックアップがあれば安心です。
クラウドサービスを利用している場合でも、サービス事業者の障害に備えて自社でもバックアップを取ることは大切です。
事業継続性を確保するためにも、バックアップは不可欠といえます。
①事故、災害、サイバー攻撃からの迅速な復旧
:予期せぬ事態が発生しても、バックアップからシステムを素早く復旧させることができます。
自然災害やサイバー攻撃などの大規模な問題が発生した場合でも、バックアップがあれば事業を迅速に再開できます。
②重要なデータやシステムの可用性を確保
:バックアップにより、常に最新のデータやシステム状態を保持できます。
定期的なバックアップと、バックアップからの復旧テストを行うことで、いつでもシステムを稼働させられる状態を維持できます。
③事業中断による経済的損失を最小限に抑える
:迅速な復旧が可能なため、事業中断による損失を最小限に抑えることができます。
データ損失による直接的な損害だけでなく、顧客の信頼喪失や評判の低下といった間接的な被害も防ぐことができます。
効果的なバックアップには、適切な方法と実施タイミングが重要です。
バックアップの主な実施方法と、各方法の特徴について詳しく解説します。
すべてのデータを定期的に完全にバックアップします。
通常は週次や月次で行い、すべてのデータをいちから復元する必要がある場合に備えます。
デメリットとしては、バックアップにかかる時間とメディア容量を多く消費することがあげられます。
前回のバックアップ以降に変更されたデータのみをバックアップすることで、時間と容量を節約します。
増分バックアップは、最後のバックアップからの変更のみを保存します。
差分バックアップは、最後のフルバックアップからの全ての変更を保存します。
これらの方法を組み合わせることで、効率的なバックアップ戦略を構築できます。
物理的に離れた場所にバックアップを保管し、災害時のリスクを分散させます。クラウドストレージやデータセンターを利用する方法が一般的です。地理的に離れた場所にバックアップを保管することで、自然災害などの影響を受けにくくなります。
バックアップデータを暗号化し、適切にアクセス管理を行うことで、セキュリティを強化します。
バックアップデータへのアクセス権限を厳格に管理し、不正アクセスを防ぎます。
また、定期的にバックアップデータの整理と古いデータの削除を行い、コストと管理の効率化を図ることも大切です。
サイバー攻撃などのトラブルが起きたときに備えて、データの確実な保護と復旧のためには、適切なバックアップ戦略が必要不可欠です。特に、バックアップ戦略を立てる際の指針として、「3-2-1ルール」が広く推奨されています。
バックアップの3-2-1ルールとは、アメリカの国土安全保障省のサイバーセキュリティー組織US-CERT(United States Computer Emergency Readiness Team)がバックアップを実施する際のルールとして、2012年に提示したものです。
このルールに従うことで、データ損失のリスクを大幅に低減することができます。
さらに、このルールはサーバーやクラウドサービスだけでなく、エンドポイントデバイス(パソコン、タブレットなど)にも適用可能です。
元データも含めて、少なくとも3つのコピーを保持するという意味であり、元データ以外に、バックアップとしてコピーを2つ以上作成するということです。
これにより、1つのコピーが失われても、他のコピーからデータを復元することができます。
ハードディスク、USBメモリ、クラウドストレージなど、2つ以上の異なるメディアに分散してバックアップデータを保存します。特定メディアに対する障害や劣化などが発生しても、同時に複数のバックアップデータを消失することなく、いずれかのメディアからの復元を可能とします。
元データの保管しているサイトとは別の拠点にバックアップを保管します。
事故や災害などで壊滅的な被害を受けたときにも、その影響を受けにくい遠隔地にバックアップを保存してあれば、データを復旧し事業を継続することができます。
エンドポイントデバイスに、3-2-1ルールを適用する際の具体的なバックアップ戦略を考えてみましょう。
多くのOSには、ローカルバックアップ機能が搭載されています(Windows11の「バックアップ機能」、macOSの「Time Machine」など)。これらの機能を活用し、定期的にデバイス内の別パーティションや外付けドライブにバックアップを作成します。
外付けハードディスクやUSBメモリなどの外部ストレージにバックアップを作成します。
ただ、企業の情報セキュリティポリシーでUSBメモリの使用を制限していたり、オフィス外への持ち出しを禁じていることもあるでしょう。自社のルールに従って適切に運用する必要があります。
Google Drive、Microsoft OneDrive、iCloudなどのパブリッククラウドサービスの他、自社専用プライベートクラウドサービスなどを利用して、重要なファイルを定期的にバックアップします。これにより、物理的に離れた場所へのバックアップを容易に実現できます。
特に機密性の高い情報を扱う場合、バックアップデータの暗号化は必須です。
多くのバックアップソリューションには暗号化機能が組み込まれていますが、必要に応じて追加の暗号化ツールを使用することも検討しましょう。
エンドポイントデバイスにおいても3-2-1ルールを適用することで、PC上の重要なデータを効果的に保護することができます。
ただし、モバイルデバイスの特性上、常時接続や大容量のバックアップが難しい場合もあるため、デバイスの使用状況や重要度に応じて、適切なバックアップ戦略を選択することが重要です。
セキュリティリスクを最小化するために、パスワードの役割と危険性について学びました。
パスワード管理を徹底し、現実的なベストプラクティスを導入することで、システムのアカウントやデバイスのセキュリティを向上させることができます。
セキュリティを重視し、適切な対策を講じることは、企業の機密情報や個人データを守るために不可欠といえるでしょう。