サイバー犯罪の被害を受けるリスクが高まる中、注目を集めるのがアンチウイルスソフトの導入です。あらかじめ脅威にさらされることを防ぐための機能が充実しており、企業での運用はもちろん、個人でもインストールしておくことが推奨されています。
ただ、一方ではWindows OSやMac OSの標準的なセキュリティ機能が進化していることもあり、これらのソフトは必要ないという意見もあります。
今回はそんなアンチウイルスソフトの存在意義や、導入のメリット、そしてウイルス対策の効果を最大限高めるために検討したいポイントをご紹介します。
そもそもアンチウイルスソフトは、どのような機能を備えているのでしょうか。ここで改めてその役割を確認しておきましょう。
アンチウイルスソフトが最も活躍するシーンとして、ウイルス感染の予防が挙げられます。アクセスするサイトの安全性を事前に確認し、URLをクリックしても大丈夫なのか、そして共有ファイルにウイルスが混入していないかを事前にチェックして、未然に感染を防ぎます。
ウイルスは一度感染してしまうと厄介な被害をもたらすだけでなく、他のユーザーに感染を拡大させてしまうリスクをはらんでいます。アンチウイルスソフトはこういった被害を食い止めるための機能性に優れ、予防に特化した機能性を備えます。
万が一感染を未然に防げなかった場合でも、ウイルスの排除機能を活用して感染による被害を最小限に抑えます。デバイスに悪影響を与える不正プログラムを自動で特定し、隔離と排除を実行してくれます。
インターネット上で観測されている既知のウイルス情報のパターンと照らし合わせ、ウイルスの特定と排除を実行できるのがこのソフトの強みです。
直接PCやユーザーに悪影響を与えないものの、デバイス上の情報を静かに流出させるスパイウェアも、自動で検出の上排除が可能です。事前に登録されているパターン情報とデバイス上のプログラムを照合することで、確実かつ速やかな検知と排除を実行します。
アンチウイルスソフトは、上述の通り安心のインターネット利用を実現する上では欠かせない機能群を有しています。一方で近年ではOSに標準搭載されているセキュリティ機能も高度化しており、Windows OSで提供されているWindows Defenderは優れた性能を発揮するとして、注目を集めています。
Windows Defenderが高く評価されている最大の理由は、アンチウイルスソフトが実装している標準的なセキュリティ機能は大体実装されている点にあります。
元々Windowsの標準セキュリティ機能はおまけ程度のものであり、アンチウイルスソフトをインストールするまでの繋ぎとして考えられていました。しかしWindows10以降実装されているWindows Defenderは、ウイルススキャンやファイアウォールの設定、アプリとブラウザの防御機能など、豊富な対策が実現可能です。
そのため、個人的なPC利用に使用を限定するのであれば、アンチウイルスソフトをわざわざ別途インストールする必要はないと考えても差し支えありません。
また、Windows DefenderはOffice製品などと同じく、OSに標準搭載されている機能であるため、無料で利用ができます。アンチウイルスソフトは無料版もありますが、本格的な対策機能を活用するためには有償の製品を購入しなければならないため、そのためのコストがかかります。
加えて、近年採用されている多くのソフトはサブスクリプション形式での導入が進んでおり、毎年更新費用がかかります。買い切りでの利用ができないため、維持コストがかかる点はデメリットとも言えます。
一方、Windows Defenderにはない有償のアンチウイルスソフトだからこそ活躍するメリットもあります。
有償のアンチウイルスソフトは、課金が必要な分便利な機能を数多く備えています。
パスワードを保存して安全に管理しながら、必要の際には自動で入力してくれる機能や、Web上でのトラッキングを回避する機能、Webカメラへの不正アクセス保護など、高度なセキュリティの実現には不可欠なものが揃います。
また、アンチウイルスソフトにはWebサイトの安全性を事前に評価したり、スパムメールや危険性の高いメールをあらかじめ遮断し、ユーザーが誤って開かないようにしてくれたりする機能を備えているものもあります。
OS標準搭載のツールも便利ではあるものの、ケアレスミスで不要なリスクを高めてしまわないための機能性についてはアンチウイルスソフトが優れており、PC操作に不慣れな人ほど導入した方が良いものでもあります。
アンチウイルスソフトを別途契約することで、サービス事業者のセキュリティサポートを受けられるのも強みです。
24時間365日、いつでも問い合わせができるだけでなく、必要の際には、オペレーターから遠隔でウイルスの排除を依頼できるなどのサービスも整備されているため、重大な事故のリスクを回避する上ではぜひ活用すべきサポートです。
ウイルス対策を徹底する上では、アンチウイルスソフトの導入はもちろんですが、その運用方法にも目を向けることが大切です。
まず、定期的なフルスキャンはウイルスの被害を最小限に抑える上で不可欠な取り組みです。通常バックグラウンドで実行されているリアルタイムスキャンは、迅速にスキャンを行なってくれるものの、未知のファイルに対してスキャン効果は得られないため、脅威の検知が遅れてしまう場合があります。
一方でフルスキャンは時間がかかるものの、デバイス上のあらゆるファイルをスキャンするため、ウイルスを見落としてしまうリスクを回避できます。
アンチウイルスソフトを利用する際には、定期的にフルスキャンを実行するようスケジューリングしておき、脅威を見逃さないよう備えましょう。
どれだけ高度なセキュリティ対策を施していても、社員のUSBファイル喪失や迂闊なインターネット利用によって企業が脅威にさらされるリスクをゼロにすることはできません。
こういった事態を少しでも回避するためには、社内のセキュリティ対策のあり方やネット利用のあり方を見直し、そのリスクを理解した上で主体的にセキュリティ対策に取り組んでもらう必要があるでしょう。
サイバーセキュリティ強化において、個人利用であれば有償のアンチウイルスソフトを導入する必要はないかもしれませんが、さまざまな機能の活用ができることから、企業でのネット利用の際には導入が不可欠と言えます。
アンチウイルスソフトが持つ機能性やサービスを改めて確認し、フル活用できるための運用体制を整備することが必要です。