サイバー攻撃の増加に合わせ、多くの企業が通常の業務のデジタル化に加え、セキュリティ対策の強化も強いられています。ただ、セキュリティを強化すると言っても具体的に何を強化すれば良いのか、そもそも自社にどのようなセキュリティリスクがあるのか、今ひとつ把握できないという方もいるでしょう。
この記事では、そんなセキュリティ対策の方向性を掴むのに役立つ、セキュリティスコアリングサービスの概要について解説します。
セキュリティスコアリングサービスとは、その名の通り自社のセキュリティ環境を客観的に調査し、スコアに落とし込んでくれるサービスのことを指します。
セキュリティ対策は、一般的な業務効率化ツールの導入などに比べ、その効果や必要な対策の度合いなどがわかりにくいという問題があります。というのも、セキュリティ対策は実際に攻撃が行われるまで正しく機能するかどうかがわからず、その対策が必要なものかどうか、不足しているかどうかを定量的に評価することが難しいためです。
そこで活躍するのが、セキュリティスコアリングサービスです。必要に応じて自社のセキュリティ状況を多面的に評価し、既存のセキュリティ対策が正しく機能するのか、どのようなところに脆弱性を抱えているのかといった検討事項を、まとめて評価することができます。
セキュリティスコアリングサービスが注目されるようになった理由としては、以下のような背景が考えられます。
セキュリティスコアリングサービスが求められるようになった背景には、企業におけるDXが急速に進んでいることが理由として挙げられます。
DXは日本でも国が主導する重要性の高いプロジェクトであり、多くの企業がデジタル化による恩恵を享受していることから、今後も多くの企業が推進してくと考えられる取り組みです。
業務のデジタル化によるDXの推進は、魅力的なメリットを多く有する一方で、セキュリティ上のリスクも大きくしてしまうことが懸念されます。
例えば、これまでデジタルとアナログを半々で使っていた企業があったとします。このような企業ではサイバー攻撃を受けても、被害を受けるのはデジタルの部分の業務だけでしたが、全ての業務をデジタル化した場合、従来のセキュリティ対策では全ての業務がサイバー攻撃の被害を被る可能性があるからです。
業務のデジタル化が進んだということは、それだけデジタルへの依存が進み、攻撃のリスクも高まっていると言えます。サイバー攻撃も日々進化している以上、従来のセキュリティ対策では十分な防護ができない可能性もあることから、早期にセキュリティ対策を評価し、改善することが重要です。
世界的にDXが浸透したことで、サイバー攻撃の発生件数そのものも増加傾向にあります。日本においてもこの傾向は例外ではなく、2022年のサイバー攻撃の発生件数は週平均970件と、前年と比較して29%も増加しています。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000168.000021207.html
また、近年はただサイバー攻撃が増えているだけでなく、金銭的な被害が深刻化している点も大きな懸念事項となっています。
従来のように企業サイトに障害が発生するような軽微なものにとどまらず、機密情報の流出や、機密情報や社内システムを人質にとった身代金の要求など、直接事業の継続性に深刻な影響をもたらす被害も多く確認されているのが現状です。
残念ながら、このようなサイバー攻撃のリスクを完全にゼロにすることは不可能ですが、被害に遭うリスクを限りなく小さくしたり、被害を受けた際の損失を最小限に抑えることはできます。そのための有効な対策方法を検討するのに使用するのが、セキュリティスコアリングサービスです。
セキュリティスコアリングサービスを導入することで、企業は以下のような導入メリットを期待できます。
セキュリティスコアリングサービスは、自社に不足しているセキュリティ対策を発見する上で非常に有効です。
社内全体のセキュリティ状況をスコアで算出し、減点の対象となっている領域が、なぜそのようなスコアになっているのか、何をすればスコアを改善できるのかというプロセスで、効果的に改善施策を検討できるでしょう。
セキュリティ担当者の主観ではなく、セキュリティの専門家によって客観的に評価してもらえる点もポイントです。社内のセキュリティ担当者の主観に頼ることなく、最新のサイバー攻撃の事情を踏まえた対策を検討できます。
セキュリティスコアリングサービスの利用には費用がかかりますが、結果的には費用対効果に優れるセキュリティ対策にも役立つでしょう。
セキュリティ対策は、ただセキュリティサービスを色々導入すれば良いというものではなく、自社の脆弱性を解消できる効率的な対策を実行しなければなりません。
自社の脆弱性が正しく把握できていないと、すでに対策済みの領域のセキュリティを強化して、余計にセキュリティコストがかかってしまったり、肝心の脆弱性を見逃してしまい、セキュリティホールが放置されてしまったりする事態に発展するからです。
このような事態を回避するためにもセキュリティスコアリングサービスを利用し、正しく自社のセキュリティ状況を把握する必要があります。
セキュリティスコアリングサービスは、日本でもさまざまな企業から提供されています。ここでは、主なサービスを紹介します。
インフォメーションデベロップメントが提供するセキュリティスコアリングサービスは、クライアント企業の情報収集を徹底して行い、攻撃者も取得するであろう情報に注目し、セキュリティ診断を行うサービスです。
サプライチェーンを踏まえた脆弱性の洗い出しと、セキュリティコンサルタントによりアドバイザリーで、クライアントのセキュリティ強化に努めます。
公式サイト:https://www.idnet.co.jp/service/ssc.html
NTT コミュニケーションズのWideAngleは、中小企業向けに提供しているセキュリティスコアリングサービスです。インターネット上のクライアント企業の公開情報などからセキュリティ評価を行い、独自の解析レポートを提供します。
調査対象のドメインを表示するだけでセキュリティを評価してもらえるので、比較的利用しやすいサービスと言えます。
公式サイト:https://www.ntt.com/business/services/security/security-management/wideangle/securityscorecard.html
この記事では、セキュリティスコアリングサービスの概要や導入メリット、主なサービスについて解説しました。
セキュリティ対策の重要性については理解していても、正しくセキュリティ対策を行うためには外部の手を借りることが大切であり、そこから得られる情報には大きな価値があります。
セキュリティの強化を検討している場合は、上記で紹介したサービスを利用するなどして、自社のセキュリティ状況を正しく把握する時間を設けることが大切です。