ビジネスを行う上で、最近注目されているのが「シャドーIT」という言葉です。自分の部署で業務効率を上げるために、社内で提供されているITリソースでは不十分だと感じたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その際に個人的にクラウドサービスやアプリなどを利用することが、企業にとって大きな問題を引き起こすことがあります。
本記事では、そんなシャドーITの正体と、企業における影響、そして取り組むべき対策について解説します。ぜひ、最後までお読みください。
「シャドーIT(Shadow IT)」とは、企業が許可していないIT資源やサービスを従業員が使用することです。
具体的には、従業員が自分のスマートフォン、タブレット、PCなどの個人所有のデバイスを使用して、業務に関するアプリケーションやクラウドサービスを利用すること、または社内のプロジェクトで必要なソフトウェアをインストールすることが挙げられます。
シャドーITは、従業員が企業のIT資源やサービスに対して不満を持つことによって生じることがあります。また、IT部門がビジネスニーズに追いつけなかったり、IT部門の指導や教育が十分でなかったりすることも原因となる場合があります。
シャドーITの種類と原因について解説します。企業は、シャドーITのリスクを把握し、適切な対策を実施する必要があります。ここでは、シャドーITの代表的な種類と、それらがなぜ生まれるのかの原因について解説します。
クラウドサービスの利用シャドーITの代表的な種類としては以下のような
1. クラウドサービスの利用
クラウドサービスは、インターネット経由で提供されるサービスであり、シャドーITの代表的な形態の1つです。パーソナルクラウドストレージサービスやビジネス向けのクラウドサービスなど、さまざまな種類があります。
例えば、Dropbox、Google Drive、OneDriveなどのパーソナルクラウドストレージサービスは、個人的なデータの保存や共有に利用されます。
一方、Salesforce、Amazon Web Services(AWS)などのビジネス向けクラウドサービスは、ビジネスプロセスやアプリケーションの開発・運用などに利用されます。
2. パーソナルデバイスの利用
パーソナルデバイスは、スマートフォンやタブレット、ノートPCなど、個人が所有するデバイスのことです。これらのデバイスは、持ち運びが容易で、導入が簡単なため、シャドーITの一形態として利用されることがあります。
また、USBメモリーや外付けHDDなどの携帯可能なストレージも、シャドーITの1つとして挙げられます。
3. SaaSサービスの利用
SaaS(Software as a Service)は、インターネット経由で提供されるソフトウェアサービスのことです。
SaaSサービスは導入や利用が容易であるため、シャドーITとして利用されることがあります。代表的なSaaSサービスとしては、Slack、Zoom、Trello、Asanaなどのコミュニケーションツールや、Google Docs、Microsoft Office Onlineなどのオンラインオフィスツールがあります。
企業で許可されていないものや、セキュリティやコンプライアンスの観点から問題があるものが含まれることがあります。企業はこれらのリスクを把握し、シャドーIT対策を実施する必要があるでしょう。
シャドーITが生まれる原因には以下のようなものがあります。
1. IT部門の対応が遅い
企業のIT部門は、限られた予算内で従業員からの要望に応えるためのリソースを管理しています。そのため、IT部門は、全ての要望に対応することができず、従業員のニーズに合わせたIT資源やサービスを提供することができません。その結果、従業員が自分で必要なIT資源やサービスを探してしまい、シャドーITが生じることがあります。
このような問題を解決するためには、IT部門が従業員からの要望に対応するための体制を整備することが重要です。IT部門と従業員とのコミュニケーションを円滑にし、従業員のニーズを把握することで、必要なIT資源を提供し、シャドーITを防止することができます。
2. ユーザビリティの問題
従業員が使い勝手が良いと感じるシャドーITを導入するのは、IT部門が提供するIT資源やサービスが使いにくかったり、機能が制限されていたりする場合が多いためです。
そのため、従業員が自分たちでシャドーITを導入して、より使い勝手が良く、生産性が高くなるIT環境を作ろうとする場合があります。
しかし、シャドーITの導入にはセキュリティ上のリスクが伴うため、IT部門と従業員とのコミュニケーションが重要となります。
3. セキュリティやコンプライアンスの知識不足
シャドーITが発生する原因の1つに、従業員のセキュリティやコンプライアンスに対する知識不足が挙げられます。従業員がシャドーITを導入する際、企業のセキュリティ規約やコンプライアンスの問題について当人は無自覚である場合が多いでしょう。
従業員が自分のパーソナルデバイスやクラウドサービスを使用することで、企業の重要な情報や個人情報が漏洩する可能性があります。
このような問題を防止するためには、企業は従業員に対して適切なセキュリティ教育を行い、コンプライアンスについても十分な説明を行うことが重要です。また、従業員が利用しやすいIT資源やサービスを提供することで、シャドーITを導入する必要性を減らすことができるでしょう。
シャドーITがもたらす3つのリスクについて解説します。場合によっては企業に深刻な被害をもたらす可能性があるため、リスクを把握して適切な対策が取れるようにしましょう。
個人所有のデバイスやクラウドストレージを利用することで、企業のセキュリティ対策が及ばない範囲で、マルウェア感染が発生する可能性があるため注意が必要です。
また、シャドーITによって導入されたアプリケーションが、セキュリティ的に脆弱性があったり、マルウェアが仕込まれていたりする場合もあります。
さらに、シャドーITの利用によって、個人が保有するアカウントを企業の業務に利用することがあるため、アカウント乗っ取りによる情報漏洩や不正アクセスのリスクが存在することもあるでしょう。
シャドーITがもたらすリスクのうち、もう1つの重要な要素はデータ管理上のリスクです。シャドーITで使用されるクラウドサービスやSaaSサービスは、企業のデータが外部に漏洩する可能性があります。
例えば、パーソナルクラウドストレージに重要な企業データを保存した場合、クラウドストレージがハッキングされた場合やアカウントが乗っ取られた場合、その情報が外部に漏れることがあります。
また、個人所有のデバイスを使用する場合、従業員が退職した際に企業の機密情報がデバイス内に残ってしまう可能性があります。そのため、企業はシャドーITのリスクについて真剣に考え、適切な対策を講じる必要があります。
シャドーITが企業にもたらすリスクの1つに、コンプライアンス上のリスクがあります。例えば、従業員が自分で導入したサービスやアプリケーションが、法律や社内規定に違反する可能性があるかもしれません。また、情報の保護やプライバシーに関する法律に違反する可能性もあります。
具体的には、金融機関であれば、顧客情報の取り扱いに関する法律に準拠しなければなりません。シャドーITを利用して顧客情報が外部に流出した場合、法律違反による罰則や、信頼性の低下、顧客からの信用喪失など、重大な問題を引き起こすことになります。
企業は、コンプライアンスに関する法律や規制を遵守するために、シャドーITの利用に対して適切なガバナンスを確立する必要があります。
前述したリスクを防ぐために、企業がシャドーITに対する対策として取り組むべき3つのポイントを紹介します。
シャドーIT対策のポイントのひとつは、従業員へのセキュリティ教育です。従業員に対して、シャドーITがもたらすリスクや企業が推奨するIT資源やサービスの利用方法を正しく説明することが重要になります。
従業員への教育は、定期的な研修や啓発活動を通じて行うことが効果的です。具体的には、社内でのセキュリティやコンプライアンスに関する規定の周知徹底、適切なIT資源やサービスの利用方法の説明、リスクについての認識を高めるトレーニングなどが含まれます。
シャドーITを抑制するために、企業は従業員の教育に加えて、IT基盤の整備にも注力する必要があります。IT部門が必要なリソースを迅速に提供することで、従業員は規定外のクラウドサービスなどを利用しなくて済みます。
また、IT部門が必要なリソースを提供できない場合は、原因を調べ、適切な対応策を講じることが重要です。企業にとって、基盤整備にかかるコストはシャドーITによるリスク回避に必要な投資といえます。そのため、積極的に投資し、より堅牢で安全なIT基盤を構築することが重要です。
シャドーIT対策のポイントとして、ITポリシーの策定と実行が挙げられます。企業は、シャドーITが発生する原因を分析し、従業員に対する明確なITポリシーを策定することが必要です。
ITポリシーには、許可されたITリソースの範囲や、個人情報の保護に関するルールなどが含まれます。ポリシーを従業員に明確に伝えることが重要であると同時に、定期的なレビューと更新が求められます。
ポリシーの策定と実行によって、従業員がシャドーITを導入するリスクを低減し、セキュリティやコンプライアンス上の問題を回避しましょう。
本記事では、シャドーITの正体と、企業における影響、そして取り組むべき対策について解説しました。
「シャドーIT(Shadow IT)」とは、企業が許可していないIT資源やサービスを従業員が使ってしまうことです。企業にとってはセキュリティ、データ管理、コンプライアンスなどのリスクを引き起こす原因となります。
これを防止するには、従業員への教育、IT基盤整備、ITポリシーの策定と実行の3つのポイントが重要です。具体的には、従業員に対するセキュリティ教育や、IT基盤の整備、ITポリシーの策定と実行などの対策が求められます。これにより、シャドーITによるリスクを回避し、企業の安定的な業務運営を確保することができます。