ビジネスにおける社内外とのコミュニケーション手段として、チャットツールやオンラインミーティングを使うことも頻繁になってきましたが、メールはいまも重要なツールのひとつです。ただ、メールにはその利便性とは裏腹に、情報漏洩のリスクも潜んでいます。
本記事では、メールによる情報漏洩の被害と影響、情報漏洩の原因、さらには効果的な対策方法について詳しく説明します。セキュリティを強化し、情報漏洩を防ぐための手段を知り、安全なメール環境を構築しましょう。
メールは、コミュニケーションを円滑にするために重要な役割を担っていますが、一方でその使い方を誤ると、大きな情報漏洩を引き起こす可能性があります。
機密性の高い情報が外部に漏れてしまうと、深刻な被害をもたらすことになりかねません。ここではまず、メールによる情報漏洩がもたらす具体的な被害について解説します。
メールによる情報漏洩とは、機密性の高い情報が人為的なミスや不正な手段で外部に漏れてしまうことを指します。
たとえば、本来送るべきではない相手にメールが送られてしまうことや、別な顧客に送るべきファイルを間違って添付して送ってしまい、そこから情報漏洩するといったことが考えられます。
あるいは、社内のPCがマルウェアに感染して、予期せぬ相手に機密情報を送信してしまったり、悪意ある人間が意図的に社内情報を漏洩してしまったり、といったことも起こり得るでしょう。メールは便利なコミュニケーションツールですが、不注意やセキュリティの脆弱性によって、重要な情報が外部に流出する危険性があることを常に意識しておく必要があります。
情報漏洩が起こると、企業はさまざまな被害を受けることになります。顧客データや機密情報の漏洩が公になると、信用力の低下やブランドイメージの毀損は免れないでしょう。一定期間の営業停止や、事業を縮小せざるを得ないかもしれません。
また、機密情報が競合他社や悪意のある第三者の手に渡ることで、競争力を失い、経済的な損失を被る可能性もあります。場合によっては、損害賠償を請求されるなどの法的な問題まで発展するかもしれません。
情報漏洩の影響は、個人や企業にとどまらず、顧客や取引先、株主などにも広がる可能性があります。
特に、個人情報や企業における機密情報が漏洩した場合は、被害の拡大が懸念されます。情報漏洩への対応は、迅速に行わなければなりません。
メールによる情報漏洩は、人為的なミスに起因する場合とセキュリティ上の問題の、大きく2つの原因が考えられます。
メールによる情報漏洩のうち、最も多い原因は、人間のミスによる誤送信です。代表的なものをいくつか説明します。
・TO/CC/BCCの指定ミス
通常、メールの宛先は、受信者に合わせてTO/CC/BCCのいずれかに指定します。企業の営業担当者などが多くの顧客に一度にメール送信する場合、顧客アドレスはBCCに設定するのが一般的です。
これを間違えてTOやCCに設定してしまい、全ての顧客にメールアドレスが丸見えになってしまうといった誤送信は、よく起こるミスです。
・宛先メールアドレスの間違い
そもそも送りたい相手のメールアドレスと間違えて、別な人のアドレスを指定して送ってしまうことも、起こりがちです。
たとえば、アドレス帳で検索して送信相手を指定しますが、そのときに同姓同名の人を間違えて選択してしまったことに気づかず送信してしまう、といったことです。
・ファイルの添付ミス
本来送付すべきファイルと間違えて、別なファイルを添付してメール送信してしまった、というミスです。
提案書や契約書などのファイルをメールに添付して送ることも多いですが、他社に公開してはいけない機密情報であることも多く、重大事故に該当することもあります。
受信したフィッシングメールのリンクをクリックしてしまったり、マルウェア付きのメールを誤って実行してしまったりすることで、情報漏洩につながることも考えられます。
PCのセキュリティ設定だけでは、被害を完全に防ぐことはできません。不正なメールへの対応など、社内のセキュリティポリシーが不十分だと、被害が拡大するおそれがあります。その他、悪意を持った社員による不正行為により、意図的に情報漏洩が発生することも考慮しておかなければなりません。
メールによる情報漏洩を防ぐためには、適切な対策が必要です。ここでは、誤送信防止機能の活用、安全なパスワード管理、セキュリティポリシーの策定、信頼できるセキュリティソフトウェアの利用といった効果的な対策方法について解説します。
メールクライアントやセキュリティソフトウェアには、誤送信を防止するための機能が存在します。送信前の確認画面の表示や宛先の自動補完の無効化など、誤った送信を防ぐための設定を行うようにしましょう。
・送信前の確認画面表示
メールを送信する前に、確認画面が表示される機能です。
たとえば、マイクロソフトのOutlookでは「送信の取り消し」機能が用意されています。この機能を使うと、送信ボタンを押したあと、最長10秒以内であればメール送信を取り消すことができます。
この時間を使って、宛先や添付ファイルが正しいか、メール送信前に今一度確認するようにしましょう。
・宛先の自動補完の無効化
宛先の自動補完とは、最初の何文字かを入力すると、該当するメールアドレスを自動選択してくれる機能です。便利な機能ですが、同じ苗字や名前の人が増えてくると、間違った宛先を選択する可能性がでてきます。
メールクライアントに宛先を自動補完する機能がある場合、これを無効化することで誤送信のリスクを減らすことができます。代わりに、宛先を手動で入力することになり、利便性が大きく下がってしまうのが難点です。
・添付ファイルは使わせない
ファイルにパスワードを設定するのは一般的ですが、メールに添付して送る以上、ミスが発生する可能性は残ります。添付ファイルの機能ではなく、クラウドストレージや外部のファイル共有の仕組みなどを使って、メールとは別なルートでファイルを送ることも、検討してみてはどうでしょうか。
これにより、添付ファイル間違いを減らすことができます。専用のツールやシステムを導入することになりますが、誤送信の対策としては非常に有効です。
メールアカウントに限らず、不正アクセスや情報漏洩を防ぐためには、適切なパスワード管理を心がける必要があります。安全なパスワードは、推測されづらい長い文字列で、英数字や記号などをランダムに混ぜるのが望ましいとされています。単調な文字列や辞書に載っているような英単語は、使わないようにしましょう。
以前は定期的な変更が推奨されていましたが、パスワード自体の漏洩実績がなければ、それは安全なパスワードでもあるということであり、変更せずそのまま使うほうがいい、とされています。パスワード管理についての最新ガイドラインを確認したうえで、適切な設定を行いましょう。
企業や組織では、メールに関するセキュリティポリシーを策定し、社内での遵守を徹底することが重要です。
誤送信の防止機能や、パスワード管理の徹底といった、具体的な対策をもとにガイドラインを作成したうえで、従業員に教育を行うことで情報漏洩リスクを低減できます。
セキュリティソフトウェアの導入は、メール情報漏洩対策において重要な要素です。
マルウェア感染対策やフィッシング、ランサムウェア対策機能を持ったセキュリティソフトウェアを使用することで、機密データを保護し、情報漏洩を防ぐことができます。メールだけでなく、リムーバブルメディアへのファイル持ち出しを防止する機能があれば、オフラインでの情報漏洩予防にもなるでしょう。
メールによる情報漏洩は、企業や個人にとって深刻なリスクとなり得ます。しかし、適切な対策を講じることで情報漏洩リスクを軽減できます。
メール送信時の注意やセキュリティ対策の強化、社内での教育など、積極的な取り組みが必要です。情報漏洩のリスクを理解し、対策を講じることで安全なメール環境を構築しましょう。